約 3,679,268 件
https://w.atwiki.jp/fujikoji/pages/225.html
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/26125.html
【登録タグ NexTone管理曲 T VOCALOID てぃあら 初音ミク 曲 殿堂入り 真理恵 真理歪】 作詞:てぃあら 作曲:てぃあら 編曲:てぃあら 唄:初音ミクAppend 曲紹介 てぃあら氏のボカロオリジナル11作目。 PVは真理歪・真理恵両氏によるの姉妹合作。 歌詞 もしも明日が終って もしも未来があるのなら 例え光が無くても 月の灯りを眺めてた 叶わない事だと思っていた 失う事が怖かった 沈まない太陽探してた あなたがくれた温もり求めて 私が居た記憶さえ 全て流されていくの 心さえ壊してしまうほどに この想い忘れずに そっと・・・ 不確かな愛(もの)だと思っていた 信じられずに逃げてきた 変わらない空に願い込めて 私と誓い交わした約束 あなただけが全てなら 痛みさえ消えないまま 心まで砕けて涙溢れ 儚くて恋しくて ずっと・・・ 私が居た記憶さえ 全て流されていくの 心さえ壊してしまうほどに この雨に打たれても 切なくて 切なくて 痛みさえ消えないまま 心まで砕けて涙溢れ 眠れずに墜ちていく そっと・・・ 声の限り叫び続けるよ 遠く遠く どこまでも届け 沈まない太陽探してた コメント 追加乙です! -- 名無しさん (2013-07-15 18 23 50) 初めて聴いて一目惚れしました!!カラオケ入ってほしい(*^^*) -- 名無しさん (2013-07-18 23 56 47) いいね -- sigu-シグ- (2013-07-26 21 45 44) 感動しました。曲に入りこんでしまって、きづけば泣いていました。何回聞いてもいい曲ですね、、 -- えりか (2013-08-25 03 58 32) いいねぇ… -- 名無しさん (2013-09-18 00 09 26) 最高♪♪ 1回聞いてはまった(≧∇≦)なんか、リズムがいぃ! 切なくなりますね…、 -- きなつ (2014-02-01 15 28 13) 毎回毎回鳥肌が・・・こりゃマジですげぇ -- 名無しさん (2014-04-01 01 44 56) 曲の雰囲気大好きです! -- 名無しさん (2014-08-07 00 33 32) 綺麗な曲だと思いました 本当に素晴らしかったです -- 亞衣 (2014-08-14 21 06 29) キレーな曲・・・。 -- 夢子 (2014-12-05 20 10 21) すっごく号泣なう! -- 名無しさん (2015-12-22 13 35 51) 初めて聞きましたがとても素敵です、 -- yn (2016-08-25 23 25 44) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/154.html
前truetearsVSプレデター5 真っ白く連なる雪原の道で、一人の少年が自転車を転がしている。 空からキラキラと輝く結晶が舞い、辺りの家々ははシンシンと静かに眠っていた。 と、彼の背中を眩いライトが黄色く照らす。 「あら、眞ちゃん?こんな遅くに出歩くなんてダメじゃない」 ミニバンが少年の隣まで来ると、運転席の窓から女性が顔を出した。 その容姿はまだ20代といっても通じる美貌を維持しており、妖艶とさえいえた。 「送ってあげるから上に自転車載せなさい」 言われるまでもなく、助手席から坊主頭の少年が降りてきて、 眞一郎のハンドルをとる。 「ささ、どうぞ、坊ちゃんは助手席に。後は自分がやります」 自転車というのは、転がすには容易にできてるが、実はかなり重い。 しかし、普段から力仕事をこなしてる故か、軽々とそれを持ち上げ、 荷台にスルリと載せてしまう。 「・・・ん?」 ふと、眞一郎が違和感を覚える。 どこか何かがズレたような、だが確かにひっかかりを覚える。 「どうしたの眞ちゃん?」 「何か不味かったですか坊ちゃん?」 二人が口々に尋ねるが、なにか不快なことがあるわけではない。 長いあいだ、寒空の下を彷徨ってきたのだから、 いまようやく家族と会えてとてもホッとしているのだ。 それなのに、どこか合点のいかないこの感じ。 「比呂美がいないんだけど・・・知らないかな?」 様子から察するに期待はできないが、一応聞いてみる。 「さぁ、見つからないわ。明朝まで戻らなければ警察に連絡してみましょう」 「そっか・・・」 やはり見つかっていない。が、あの母が彼女を探しにでてくれただけでも嬉しいことだ。 それにもし危ない事件に遭遇したとして、 最近の子が一晩戻らないだけで警察はすぐには動いてくれないだろうし、 自分なりの当ては散々探したのだ。ここはやはり、一度家に戻って体勢を整えたほうがいい。 「じゃ、ほら早く乗りなさい」 「うん、・・・あ」 助手席に回ろうと丁稚の横を通ったとき、さきほどの違和感に気付いた。 彼の体から母親の臭いがするのだ。 香水などの類ではなく、普段慣れしたんで意識もしない、肉親独特の香り。 「どうかしました?」 丁稚が怪訝な顔をするが、それには応えず眞一郎はしばし熟考する。 一緒の車で、一緒に動き回っていたから臭いが移った、などという冤罪裁判のような言い訳は信じない。 というより、その‘気付き’に達した時点で十中八九結論は出ていた。 「母さん・・・悪いけど、先帰っててくんない?」 当然、驚く母親。雪はどんどん積もり、気温はますます低くなっていくというのに。 「あの子をまだ探すの?じゃあ私たちと一緒にいきましょうよ」 てっきり引き止められると思っていたのに、この提案は驚いた。しかしそうもいかない。 「え~と・・・その、つまり、ちょっとまだ気になってるとこがあってさ・・・」 「じゃあ車で行きましょ?ね?」 「坊ちゃん?」 参ったな。お世辞にも口が回るタイプではない。が、天啓というべきか丁度いいひらめきが降りてきた。 「学校の友達に聞いたんだけどさ、その、ストリップ・バーで比呂美に似た子がいたとかいないとか。 で、もしかしたらって思ったんだけどやっぱりあーいうとこは、女性がいくと不味いでしょ。 俺も心細いんだけど、彼(丁稚)とだったら大丈夫かなって。 あ、もちろん入らないよ、入れないし。ただ近くの喫茶店とかで張ってたらいるかもしれないでしょ? いや、いないと思うけどね。だから、万が一分の万が一だけど、イチオー行ってみようかと。 だから母さんはこないでね」 「・・・・・・」 眞一郎の長々しい話に呆気にとられた母だったが、比呂美を大事にしている眞一郎が 彼女の名誉を傷つけるような嘘はつかないと思ったのか、渋々といった感じで了承した。 役にたたない自転車は車で持って帰ってもらい、眞一郎と丁稚は夜道を歩く。 「でもまさか・・・いるわけないですよね?」 「・・・というか、あれは全部嘘」 「・・・?え、えぇー!?」 眞一郎を清廉潔白な正直者とも評していないが、あんな弁舌があるとは思わなかった丁稚が驚く。 「ははは・・・流石坊ちゃん。物語りの才がありますね」 「いやまぁ・・・うん。それはさておき」 「え。てことはホントに色町に行きたくて?・・・しょうがないっすねぇ。じゃあ今日はとっておきの・・・」 「あ、いや・・・じゃなくて」 とっておきの何なのか気になったが、もっと気になることを片付けておきたい。 「もし間違ってたら大変失礼なんだが・・・俺の勘違いだと思うし・・・非常に言いづらいんだが」 言葉をつっかえつっかえしながら、なんとか搾り出す。今ならまだ引き返せる・・・ そう、それに言ったところで俺はまたいらぬ混乱を作るだけ・・・ 「おれ奥さんと寝てるんです」 「え?」 眞一郎が喉まで出掛かった疑問を押さえ込んだとき、丁稚の少年が心を読んだように言葉を発した。 「・・・って、言ったら信じます?」 「あ・・・いや・・・その」 言葉に詰まる眞一郎。 二人の仲を疑ったのは何も体臭だけのことではない。その服のよれ具合、汗や髪の微かな乱れ、 仕事とは別の目線の呼吸、そういった仕草がどこか親密なそれを思わせたのだ。 なにも街中をゆくカップルの交際度判定ができるわけではない。 ただ、日常ごく親しい間柄の人たちにも、今まで自分が見ていたのとは別の側面があるのでは、と思い始めたのだ。 記憶を辿れば、丁稚と母はよく一緒にいる姿が浮かぶ。 それほど親しいとも思っていなかったが、逆にそんな素振りもないのに妙に連携がとれているというか。 子の贔屓目もあるが、同世代の親に比べて、眞一郎の母はとびぬけて美しい。 これは授業参観なり、出入りする業者たちの密やかな話からも確信しているし、内心自慢でさえあった。 が、この丁稚は我が家と近しい付き合いをしてるとはいえ、そんな美人妻に対してなんら青い性の欠片も見せないのだ。 淡白といえばそれまでだが。 ただその推理は半端としても、車内の2人の雰囲気が若干怪しかったのが決め手だ。 以前の自分ならそんなサインは、朴念仁のように見過ごしたろうが、 愛子の痴態を見たあとだと、致した直後の男女の気まずさのようなものが、読み取れるようになっていた。 その代償は大きかったが。 「信じるよ、というかそう思ったんだし」 眞一郎は平静にいった。内心、そう穏やかでもないのだが、どこか諦めてる節があったのもある。 ああ、またオレの知らないとこであった話か、という諦めが。 「驚きました」 「ん?何が」 「普通は殴ったり、怒鳴ったり、怒ったり、誤魔化したりするかと思って。・・・お父さんに似てるんですね、やっぱり」 父に似ている。そういわれるのは少し嬉しい。 顔は母に似てるとたまにいわれるが、からかわれているようで不遜だったからか。 「実はちょっとカルチャーショックがあって。しかもそれで失敗したせいかな。どうすればいいのか分からないんだ」 眞一郎の困ったような物言いに丁稚も少し戸惑う。何か計算があって告白したわけではない。 ただ、疑われた以上、下手に勘繰られるよりは自分が罪を引っ被るほうに仕向けられれば、と思っただけなのに。 「オレが知らなかっただけなら、知ったところで、 それは今までとなにも変わってないってことだもんな」 「坊ちゃん・・・」 「母さんが浮気してるなんてかーなーり、ショックさ・・・でも、だからって」 みんな大切なひとたちだ。比呂美や乃絵、愛ちゃんや三代吉もそうだったのに。 でもあのバスケットマンは例外だな。オレから何もかも奪いやがってからに。 まぁでも、それがあいつの欲してるもので、得ようと努力してるなら譲ってもいい。比呂美も乃絵も。 「そんなことで俺はいちいち変わりたくない」 「あ、あの坊ちゃん、なんかヤケになってません・・・?」 青臭かった眞一郎があまりにクールになってしまったので気味悪くなる丁稚。 「オレには他人の恋路にわけいって止めたり指南したり、なんてとんと縁がないし、素質も無い そんなやつが端から勝手気ままに何かいってどうなる。黙るのだって言葉のうちだ」 「坊ちゃんは何もできないひとじゃないっす」 「もちろん。でも、オレにはせいぜいこの穏やかな生活を守れるよう精進するのが限界で、 それにおれ自身、あくせく縛られて愚痴たれるのが割と好きなんだろう」 「愚痴るのがいいんすか?」 「いいんだ。いっちゃなんだが、母さんや比呂美は、きっと面倒ごとを愛してるんだろう、 そうと知らずゆえにか。 オレにとっては面倒は面倒でしかない。うまく収めるなんてできない。やっても掻きまわすだけだ」 「はは・・・まぁちょっとそうかも・・・」 「オレはオレの考える分かりやすい日常を見て、過ごして、守って、それが全部だ」 そこまでいって、父さんは丁稚と母さんがデキてるのを知ってるのだと気付いた。 丁稚と母さんはうまく隠したつもりだろうけど、全部知ってて黙ってる。 責めるような目つきも態度もせず、家族と部下を真摯に愛して、落ち着いた生活を守り続ける。 それが自分にあった生き方なんだ、というその考えはパズルの最後のピースがハマるようにしっくりときた。 そのとき、目を焼くような閃光と、地を揺るがす轟音が2人に向かってきた。 母さんが戻ってきたのかと思ったが、それは運送用の大型トラックだった。 キイィィィィィーーーーッッ! 「眞一郎!」 「乃絵・・・?」 トラックが道路の真ん中で止まると、ドアからなんと石動乃絵が出てきた。それも運転席側からだ。 厚手のコートと、右腕になにかおもちゃのような機械をつけているが変人だから気にしない。 「おまえ大型免許なんて持ってたのか?」 「そんなのいいから、早く乗って!湯浅比呂美の危機よ!」 女子高生が、雪道の無免許運転、恐れ知らずと責めるべきか、大した才能と褒めるべきか。 しかし、その顔には一点の悪ふざけのなく、真剣の一色だ。 「坊ちゃん?奥さん呼びますか?というか呼びましょう」 「だめよ!下手に動いたら殺されるわよ!」 「へ?な、なんすか?」 女子高生が‘殺される’なんていっても漫画も真似にしか見えない。だが眞一郎はそれを信じた。 「いったい何があったんだ乃絵?比呂美を知ってるのか?」 「いーかーらっ!早く乗っててばぁ!もう手遅れかも知れないのに! お兄ちゃんがあの女を殺すかもしれないんだってばぁ!」 「な、なんかヤバイ事件ですかね?警察行きましょう?」 丁稚の提案には応えず、眞一郎はトラックの助手席に向かう。 「母さんにはストリップ見てたって、伝えてくれ!」 「ちょっと?ストリップ見に行く気だったの?」 乃絵が頬を膨らませて食いかかる。 「あー、そういえばいいとこあるって言ってたなぁ・・・。すまん、説明だけしてくれないか?」 丁稚の台詞を思い出して、逡巡する眞一郎。露骨に嫌悪の顔色をする乃絵。 「みないとどうせ信じないわ」 「おまえがいうかね、そんな人並みな解説を。いいから話せよ、全部信じるから」 どこか落ち着いた眞一郎に妙な違和感を覚える乃絵だが、 いわねば動かないようなのでここは折れる。 「どこから言ったらいいのか・・・」 信じるというからには、嘘八百並べようかとも思ったが、一分一秒も惜しいのでなくなく真面目に徹す 「プレデターっていう宇宙人、こいつらは狩りをすることが大好きなモンスターなんだけどね。 そいつが今、ユタニっていう会社、ほらたまに聞くあの有名なやつの。 そのプレデターとユタニの秘密軍隊が今、あっちの山の向うで戦争やってんのよ。 あ、プレデターは一人なんだけど。 で、仲間のプレデターが武器を奪われたくないから、助けにきたんだけど、 掟がどーやらかーやかいって、いきなり家に押しかけてきて。 お兄ちゃんに確かシンビオート?黒くて気持ち悪いネバネバの宇宙生物を合体させて、 それはプレデターじゃないんだけど。 お兄ちゃんはハイになって、仮面ライダーの真似するし。 あ、そうしないと私のコレ(といって腕のガントレットをかざす)、 が爆発するの。無理にとっても腕を切り落としても爆発するんだって。分かった?」 矢継ぎ早に捲くし立てる乃絵。傍で聞き耳を立てていた丁稚は呆れていたが、 眞一郎は内容をじっくり租借する。 「それで、比呂美はいつ出てくるんだ?」 思い出したようにハッとする乃絵。 「そう!プロフェッサー?お兄ちゃんを改造したプレデターなんだけど、そいつが見せてくれた映像に湯浅比呂美が映ってたの」 その言葉には強く反応する眞一郎。 「そこに偶然居合わせて、巻き込まれたってことか?」 「えっと、切れ切れでよくは分からないけど最初はそんな感じだった。 でも、プロフェッサーがいうには、なんかすごく仲良いんじゃないかって。 プレデターって種族は平気で人殺すくせして、友情とかを感じると凄く大事にするそうで、今一緒に闘ってるらしいの」 「比呂美VSプレデターってことか?」 「じゃなくて、比呂美&プレデターみたいな。いや、一緒には闘ってないんだけど、一緒にいるのよ今」 「じゃあアニキにそう言えばいいだろ。倒すのは比呂美じゃないんだし」 その言葉には頷きつつ、悩む乃絵。 「そうなんだけど・・・お兄ちゃんもプレデターになっちゃうかもしれないの」 暗闇を覗くものは注意しなければならない。何故ならば、暗闇もまたこちらを覗いているのだから、だっけか。 「湯浅比呂美がプレデターの仲間になったら、2人とも殺しちゃうよ、きっと」 なんか既に比呂美は、平気で人殺して喜ぶ怪物の仲間として話が進んでる気がするが・・・。 「分かった?信じる?信じなくていいから早く乗って」 「信じるよ」 眞一郎の言葉に目を丸くする乃絵と丁稚。その言葉は冗談めいた雰囲気は一切無く、清らかに真っ直ぐだった。 「じゃあ・・・!」 「だが断る」 「え」 一瞬、ノリ突っ込みかネタかと思ったが、車体から離れる眞一郎に乃絵は慌てる。 「ちょ、ちょっと!だから信じなくていいからっ」 「信じる。だから行かないんだ」 どういうことだ。湯浅比呂美の危機とあらば、色々厄介ごとを起こす彼が、なんか迷いもなく断ってきてるんだが。 「分からないの!?どうなってもいいの!?命の危機なの!」 必死に訴えるが、どこまでも眞一郎の顔は冷静そのものだ。 「分かるし、そりゃどうにかせにゃ、な事態だが俺には何もできない」 「え?ちょ、ちょっと坊ちゃん?行ったほうがいいですよ!」 乃絵の話は信じないが、緊迫した雰囲気に偽りはない。いま、ついていくべきだとは丁稚も思う。 「いや、俺がいってもまた困らせるだけだよ」 「んな弱気なっ・・・!」 「弱気じゃない。分かるんだ。俺に比呂美は救えない、まして4番など論外」 乃絵がようやく理解したように、重く哀しく彼を見つめる。 「眞一郎。いま行かないと、見つからないよ・・・?」 「もう見つかったよ。比呂美は御淑やかで人気者で綺麗な幼馴染み。だから俺は家で待ってる」 「そんな女いないじゃない・・・そんな女じゃないって知ってるでしょ!!」 乃絵の激昂も眞一郎は受け流す。それは馬鹿にするでも揶揄するでもなく、ただ淡々と自分の考えを述べているだけだ。 「俺には比呂美を助けられないんだ。 でも帰ってきたら、血で汚れたアイツと今までと変わらずに過ごしたいと思ってる」 「いま、必要なのは待つことじゃない!動くことよ!」 「俺は待つしかできない。動いても大事なものを置き去りにして、取りに行ったものだってあとで捨てちまう」 「違う・・・そんなの、眞一郎じゃない・・・雷轟丸じゃないよ・・・」 乃絵の目じりに熱いものがこみ上げる。そんな気がしたが、そこからは何も流れなかった。 悔しい。とても悔しかった。 裏切られたのでも、見捨てられたのでもない。 眞一郎は籠の中を選んだのだ。翼はいらない、と決めたのだ。 湯浅比呂美が好きだ、といってくれたほうがずっとずっとマシだった。 そんな風に思うときが来るなんで思わなかった。 飛ぶことを諦めたのでも、逃げたのでもない。そもそも飛ぶことに興味がないのだ、眞一郎は。 (バッチコイ!) あのとき、地べたで自分を受け止めてくれた瞳はもう見えない。また、孤独になってしまった。 「分かってくれたか、乃絵?」 乃絵は応えず、助手席のドアを閉じると、ハンドルを回し、強引に元きたコースに戻っていく。 「いいんすか?」 あれほど大きかったトラックが、今は吹雪に包まれ、視界の遠く向うに消えていった。 「よくもないんだが・・・これが最善だよ」 哀しげに眞一郎が呟くと、つま先の方向を変える。 「で、さっきのとっておきだけどさ・・・」 「こんなとこで宇宙人を引っ掛けてるとは思わなかったぜ、流石富山の好色小町」 ヴェノム=石動純が地面に半分のめり込んだアームスーツの上から、舌を伸ばして比呂美に問いかける。 「そんなコスプレしてるひとよりはマシだと思うけど」 と強がったものの、内心はとびつきたい程嬉しかった。 疑問はつきないが、この状況で知った人間が助けに来てくれるとほど嬉しいこともない。 4番は伊達ではないということか。 「ははっ!なかなかイカした恰好だろ、ってうぉわっ!?」 足元の強化兵器がジャンプするように立ち上がると、純の片足を掴んで真上に放り投げた。 花火のように垂直に上昇して、その影はたちまち小さな黒点になる。 「砕けて燃えちまいなぁ!」 続けてアームスーツが背から煙を上げて空き缶サイズの弾頭を3発打ち出すと、 それが美しい放物線を描いて、鳥のように純目がけて飛んでくる。 一発でも喰らえば大気の塵となって富山の空と同化してしまうだろう。 「純君っ!」 比呂美が咄嗟に名前を叫ぶ。 「やぁばいっ!!」 空中で体を絞るように撓って最初の一発を紙一重でかわし、同時に両手首から黒い糸を放出した。 それで2発目と3発目を縛り上げてぶつけ、一編に爆発させると、ターンして背後の天空から一発目が戻ってきた。 超感覚─スパイダーセンス─で察知し、振り返って弾丸のように固めた糸を高速発射してそれも爆発させる。 「近すぎっ!!」 しかし爆風の衝撃で叩かれて、純の体は紙のように吹き飛ばされ、地面に埃を巻き上げて落下した。 「うわぃ!?」 慌てて踵を返した比呂美の鼻先に、後方にいたはずのアームスーツが降り立って視界を埋めた。 「ただの子どもにしか見えないが・・・あの化け物たちを惹きつける何かがあるのか?」 彼女の胴体をまるまる掴めそうな手の平が迫る。 「あ・・・ああぁ・・・う」 そのパワーとスピードを目の当たりにした比呂美は無抵抗しか最善の選択が浮かばない。 「ヴェノム・ウェブスロー!!」 そのとき、つんざくようなバイクのエンジン音が走ってきた。 体中に鉄や石の破片が突き刺さったままの黒い筋肉、赤い口の怪物純ヴェノムだ。 寄生体の一部を分離させて槍の形にし、それをアームスーツに撃ちながら向かってくる。 「効かん!!」 蚊が当たる程度にしか感じない鎧は、さらりと槍を受け、二の腕からグレネード弾を発射してくる。 「おれ様も効かん(当たらなければ)!」 純ヴェノムは雨粒を避けるような繊細なハンドル捌きでそれを潜り抜けると、 外れた弾頭が起こす爆炎を背に、天空に向かって高い稜線を描いてジャンプした。 「ヴェノム・トルネェエドッ!」 「ジャンプするだけか?」 上空の純に注意を惹かれる強化外骨格。 しかし、彼の腕から伸びた蜘蛛糸はバイクの車体に結ばれていて、振り子のようにその鉄の塊がアームスーツへ叩き込まれた。 「フン」 しかしアームスーツの腕がドリルのように回転すると、竜巻さながらのパンチをそれに打ち込む。 クレーンのように飛んできたバイクは中央から真っ二つに割れ、糸伝いに衝撃を受けたヴェノムはまた吹き飛ばされた。 それでも大地にペシャリと叩きつけられる寸前、猫のように身を返してからくも着地する。 「他愛ないわ」 ドウッドウゥッ! そのとき、遥か離れた鉄塔の真ん中辺りから、ぶら下がったプレデターがプラズマキャノンを撃ち込んだ。 アームスーツのセンサーは一瞬で干渉波クローを展開して、電磁バリアーで光線を綺麗さっぱり消滅させてしまう。 「まだまだぁっ!」 ビームに注意が及んだその短い隙に、大地を滑るように駆けてきたヴェノムがマシンの太い足にスライディングをかまして、 巨大なボディを大地になぎ倒すことには成功した。 そのとき、プレデターやヴェノムさえ予期しないほうから攻撃が追加された。 「おおおあああぁぁぁっっっ!!」 その隙に比呂美が純の放った寄生体を固めた槍を拾って、背の低くなったマシンに駆け寄る。 無論、彼女の腕力では、その強靭な槍を以ってしても、頑強な装甲を貫けるわけがない。 が、そこから生えた電磁フィールドを作り出す幾本ものアンテナのひとつ。その根元に、ズブリと黒い槍を突き刺す。 ドグォオンッ!! 「づぁああ!!?」 プレデターのプラズマ砲を防いでいたシールドのバランスが崩れ、 コントロールを失った熱エネルギーが暴れて、丸太のように太いアームスーツの右腕を根元から千切れ飛ばした。 本体から切り離され、大地に投げ出された腕は、ミミズのようにのたうち回り、獲物を求めてあさっての方向を引っ掻く。 「ひぅっ!!?」 しかし、その瞬間比呂美はパイロットの放つ、視線だけで殺せるような凍る憎しみを装甲ごしに受けた。 「おっと・・・って!」 触れただけでミキサーのように獲物を分解する腕をヴェノムがよけてる隙に、 胴体部分から蟻の足のように生えた2本の腕、パイロット自身の腕が比呂美の顔を掴んだ。 「ふぐっ!」 錠を噛まされたようにがっちりと締めてくる腕を外そうと、もがく比呂美。 プレデターも下手にキャノン砲を撃てば彼女に当たるため、照準を定めようとして撃ちあぐねる。 「もらっていくぞ、この女」 ロケットパックがオレンジ色の炎を輝かせ、空気を震わす排気音を通して、 アームスーツの巨体がふわりと宙に舞い上がる。 「ふ、ふぐぅーーっっ!!」 ヴェノムもプレデターも空は飛べない。逃げの一手をかまされたら防ぐ手は無い。 「石動ヴェノム・ファングゥ!!」 が、背後から跳びあがった黒く巨大な牙を揃えた口が鰐のようにガブリと喰いついて、強化外骨格を逃さない。 「石動ウェブ・クラッシュ!!」 そしてヴェノムの全身を覆う寄生体を限界まで膨張させ、 自らを巨大な網に変形させてアームスーツの全身をグルグルに包み込み、空中で拘束してしまう。 バリバリバリバリバリィッ!! アームスーツが装甲表面から高圧電流を放出して、ヴェノムを引き剥がそうとする。 「うえええっ、ぐぉおおっがが・・・!」 電気には耐性のあるシンビオートだが、あまりの熱にびっくりして、元の人型に戻ってしまうヴェノム。 それでも、その間に比呂美をパイロットの腕から引き剥がして、感電し炭の塊になるのを防ぐのは間に合った。 「きゃぁあっっ!」 落ちればぺしゃんこになってしまうという、高度に対する原始的恐怖で悲鳴を上げた比呂美だが、 美青年の面影がない純の首にしがみつくだけの冷静さはあった。 が、アームスーツは蜘蛛のように張り付く純から、比呂美を狙って手を伸ばしてくる。 「これはてめぇの女じゃねぇぇええっっっ!!」 ヴェノムがマシンの顔面に膝蹴りを刺すと、 右手首から蜘蛛糸を発射してアームスーツの胴体を縛りあげる。 さらに遠く鉄塔にいるプレデターに向かって自身と繋ぐように左手首からも蜘蛛糸を発射すると、 その怪物が横たわっている鉄柱へ幾重にも巻きつけた。 プレデターと純の視線だけが交わされ、生涯を寄り添った夫婦のように思考が通じ合う。 「死んでも振り落とされるなよ比呂美・・・・・・きばれマザーファッカアアッ!」 「カシャァアオォオエエエエエッッ!!」 プレデターの豪腕が柱に巻かれた蜘蛛糸をグイと掴むと、それを渾身の力で引っ張った。 プレデターの怪力がブラックホールのように鉄塔へアームスーツを吸い寄せられる。 純も糸が切れないよう、全身の筋肉の隅々まで力を漲らせて、寄生体と一体化する。 「俺の妹は富山一スウィイングウウウウウウッッ!!」 プレデターとヴェノムのパワーが合わさって、蜘蛛糸はバネのように撓んで収縮する。 「ううううううううううううううっっ!!!???」 比呂美は自分が回りすぎてバターになってしまうのではないかと考えた。 まるで洗濯機の中にいるような、この勢いなら自分の残像が見れるのではないかとさえ思った。 ジェットコースターのような振り回される遠心力で、純の首から引き剥がされてしまいそうだったが、 ヴェノムの首周辺の寄生体がガムのように彼女の腕をくっつけていたので助かっていた。 アームスーツは高い高い鉄塔の中間までその周辺をグルグルと回転しながら引き寄せられていく。 「キシャァアッッツ!!」 どちらからともなく合図の発した奇声。 蟻地獄のように鉄塔に向かっていくアームスーツがぶつかる直前に、 純の黒いボディがその身を離れて、宙に飛んだ。比呂美もその腕に抱えて。 「待たせたな・・・っておまえか」 一瞬、体にしがみついて腕に抱く感触から、妹を思い出した純だが、比呂美の顔を見て心底うんざりする。 一方、不覚にも声がよく聞こえない比呂美は、ヴェノムの裂けた赤い口と、牙のような白い目に、 その真っ黒い筋肉にお姫様だっこされて少し胸が高鳴ってしまった。 ゴガァラガアアンンッッ!! 耐震強度の保障された鉄骨が曲がるほどの衝撃で、アームスーツのボディが叩きつけられ、 鉄塔が貧乏ゆすりのようにブルブルビリビリと震動する。 この連携攻撃には強化外骨格も相当なダメージを受けて、動きが固まる。 つづく truetearsVSプレデター7
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/326.html
true tears SS第二十五弾 過去と、現在と、将来と 1 恋人握り 比呂美はまだ眞一郎に訊けないことがある。 手を繋いだままのふたりは仲上家の敷居の前で立ち止まる。 箒を持った理恵子がいて居間に来るように提案される。 眞一郎父は博、眞一郎母は理恵子、比呂美父は貫太郎、比呂美母は千草。 前作の続きです。 true tears SS第二十二弾 雪が降らなくなる前に 前編 http //www39.atwiki.jp/true_tears/pages/287.html true tears SS第二十三弾 雪が降らなくなる前に 中編 http //www39.atwiki.jp/true_tears/pages/306.html true tears SS第二十四弾 雪が降らなくなる前に 後編 http //www39.atwiki.jp/true_tears/pages/315.html true tears SS第十一弾 ふたりの竹林の先には http //www39.atwiki.jp/true_tears/pages/96.html true tears SS第二十弾 コーヒーに想いを込めて http //www39.atwiki.jp/true_tears/pages/245.html true tears SS第二十一弾 ブリダ・イコンとシ・チュー http //www39.atwiki.jp/true_tears/pages/275.html 雪がまだ降ってくれている。淡くてきれいで儚げで。 はしゃいでいればお父さんとお母さんが喜んでくれていた日々を思い出させる。 おばさんに眞一郎くんがお兄さんと言われて雪を嫌いになっても、 眞一郎くんがさらに好きになるようにしてくれる。 今も手を繋いでくれて仲上家に向う。 眞一郎くんはさりげなく私を壁側を歩かせている。 「繋ぎ方を変えよう」 眞一郎くんは右手を放してから、私の左手の指に絡めてくる。 急に割り込まれてしまって手元を見てしまう。 がっしりと固く結ばれていて解けそうにない。 「恋人握り」 囁いてみると現実感が湧いてくる。 「そういう名前が付いているとは知らなかった。夫婦握りってある?」 眞一郎くんは呟いてから私にそっと訊いてきた。 「知らない。おばさんに結婚のことまで話すの?」 「そうするつもり。こちらから本心を打ち明けておけば、向こうも反応してくれると思う。 今まで誰もが話し合おうとしてこなかったので、こちらから攻めてみようかと」 淡々としていながら静かな強さを秘めた口調だった。 「話していれば良かったこともあるわね」 話せないこともあるのを自覚している。 石動さんとどういう付き合い方をしていたのかとだ。 奉納祭りの後に私を置いておきながら、今では私と付き合ってくれている。 どういう心境の変化があったのだろう。 薄氷の上にいるかのごとく不安定で寄り添っているだけの関係かもしれない。 だから結婚という確実なものを願い、竹林での告白をプローポーズにしてしまった。 本当はたった一言があればいいのに、それ以上のものを提供された。 「昨日の今頃は待たせていたのに、一日で変わってしまった」 「ずっとどうなるか考えていたわ。気分転換にいろいろしていた」 料理やストレッチ、掃除や読書までと新たに手を伸ばしてもすぐにやめた。 落ち込んだり期待したりと困惑していても、あらゆる結果を受け入れようとした。 「ただ乃絵に絵本を見せるだけでなく乃絵のことも考えてあげたかった。 だから時間をかけてみたんだ。 それとあの絵本はカラーコピーしてあるので、比呂美が見たかったらいつでも見せてあげる」 眞一郎くんは疑われないように私の様子を窺う。私は右手を顎の下に運ぶ。 「今度にするわ」 しばらく間を置いてからにした。 即答で拒否をしたくてもできずにいた。 竹林であの絵本を見たいと言ったのは、強がりな対抗心だった。 絵本だから読者にさまざまな感想を引き起こす。 今の私なら石動さんとの仲が終わっていないような都合の悪い解釈をしてしまうだろう。 たとえ眞一郎くんが後ろめたくない内容に描いていてもだ。 「深呼吸しよう」 仲上家の門の付近で立ち止まる。 手を繋いだままで両腕を広げる。 冬の冷たい空気を肺に入れてから吐くと、息は真っ白だ。 眞一郎くんと見つめ合ってから、小さく頷き合う。 眞一郎くんが先に外回りで門の前に姿を見せると、私も後から同じようにする。 箒を両手で握り締めて掃いているおばさんがいた。 まだ敷居をまたげていない私たちの気配を感じたようだ。 私たちの姿を捉えてから繋がれている手に視線を落とした。 「おかえりなさい」 最近してくれている優美な会釈だった。 「ただいま……」 「ただいま」 言い淀んだ眞一郎くんに対して、私は最後まで言い切った。 「そんなところにいないで居間でお茶にしましょう」 くすりと微笑んでから提案してくれた。 「手伝います」 おばさんのそばに行ってから伝えようとしたくても、眞一郎くんの手を払えない。 「こういうときは、比呂美が連れて来た男の人のそばにいてあげるものよ。 ちょっと用事を済ませるわね」 おばさんは一方的に会話を終えて箒を持ったまま去っている。 雪はまだ降っているし、掃くほどに落ち葉があるわけでもない。 「俺はお袋の息子なのに」 寂しげに洩らしていた。 「おばさんは私の立場でおしゃってくれたのかも。 いつか私が男の人を連れて来るようになるって」 わざと復唱して眞一郎くんを責めてみた。 「こういうことは女のほうが意識するものだろうな。 昔と重ねてもらえているのを実感できたが、親父のときはどうしたのだろう」 眞一郎くんから足を動かしてくれて、私も合わせてみる。 このまま敷居をまたいで玄関まで行けた。 (続く) あとがき 今回から比呂美視点に戻ります。 情緒が豊かになり独自設定の情報量が増えるでしょう。 前回までは楽観的な眞一郎だったのですが、比呂美は現実的です。 理恵子はあの管理人さんのごとく箒を握っていました。 あの人は掃除しか仕事がないほどに掃いてばかりです。 同じ行動をしていた理恵子が用事を済ませてから、ふたりと向き合います。 理恵子が家事をしている場面を見たかった。 次回は、『過去と、現在と、将来と 2 白い結婚』。 居間で待たされている気がするふたり。 ようやくお盆にお茶を運んで来る理恵子。 真っ先に比呂美との結婚の決意を明かす眞一郎。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/28399.html
【登録タグ H danierukunP メルリ 曲】 作詞:danierukunP 作曲:danierukunP 編曲:danierukunP 唄:メルリ 曲紹介 タイトル通り、某アレの名曲に影響のもと作成した反戦歌です(作者コメより転載) PVのイラストはapril4luck氏の物を使用している。 歌詞 (引用元のサイトより転載) 閉ざした ココロには 壊れた 想いだけ 扉を 開いた先に 未来の 姿が見える 誰もが 望んでいない 憎しみ 止まらない雨が 何の為に戦って 引き金を引く 心無くした 操り人形 どれだけの涙を 流したらいいの? 心の奥が 引き裂かれてく ※1 まぶしい 光が 胸の奥に 届いて せつない 震える 肩先 傷の痛み 感じて 泣き叫んでいる もう今は 見る影も無く かつての 楽園などない 神気取りの独裁者 エゴをむき出しに 他人の命で 他人を殺した どれだけの涙を 流したらいいの? 小さく宿る 生きるという意味 ※2 輝く 星空 ひとつひとつが 交わり 傳える 今なら 間に合う 聲を挙げて 光を 世界中に響く この世界に 光が差す 全て終わる 絶望の光が 繰り返して 涙流し 終わりのない 負の連鎖は続く ※1くりかえし ※2くりかえし ah… 届けたい このキモチ いつか叶う この空を越えて 霧を 突き抜けて キミノムネニツタエヨウ コメント 追加おつ! -- 名無しさん (2014-02-10 20 11 46) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/seiyu-coversong/pages/2880.html
原曲・KODOMO BAND 作詞・KATZ JICK,田中昌之、作曲編曲・うじきつよし TVアニメ「北斗の拳」2代目ED曲。 【登録タグ 1986年の楽曲 J-POP KODOMO BAND アニソン 北斗の拳】 カバーした声優 今井麻美
https://w.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/3887.html
https://w.atwiki.jp/galgerowa/pages/318.html
再会、混戦、決戦/Blue Tears(中編) ◆guAWf4RW62 「アヒャ? よく分からないけど……茜ちゃんは俺の獲物だぞう!」 孝之からすれば、茜を殺害するのがこの場での最優先目的。 手傷を負わされた舞も憎いが、茜程ではない。 神の戦士である自分を拒絶した茜は、絶対にこの手で断罪しなければならない存在。 ならばこんな所でぼやぼやとしている暇など無い。 孝之は白骨の見え隠れする右足を奮い立たせ、一直線に茜の方へと駆け出した。 「え、えっ……!?」 未だ状況の変化に思考が追い付いていない茜に対して、二人の狩人が迫る。 混乱した今の茜では、それこそ数秒と保たずに殺されてしまうだろう。 否、たとえ茜が正気だったとしても、二人掛かりの猛攻はとても防ぎ切れまい。 しかしそこで茜の前に、青色の疾風が吹き荒れる。 恐るべき速度で駆けつけたアセリアは、茜を庇うような位置取りで、長柄の鉄パイプを深く構えた。 「――――フ!」 「つあっ……!」 「うひゃああッ!?」 奔る剣戟。 目にも留まらぬ動作で振るわれた鉄パイプが、孝之の斧を弾き飛ばして、返す刃で瑞穂の投げナイフすらも受け止めた。 鍔迫り合いの形で顔を突き合わせながら、瑞穂とアセリアは視線を交錯させる。 「ミズホは……私を仲間と言った。なのに、どうして?」 「……アセリアさんには謝らないといけませんね。ですが仕方無いんです。 僕はこの殺し合いで、優勝しないといけなくなりました」 何故、と問い掛ける暇は無い。 此処は戦場であり、悠長に会話している暇などある筈も無い。 これまで何故アセリアが、茜に助太刀しなかったのか。 それはこの場で最強の火力を誇る、川澄舞を封じておく為に他ならない。 そしてアセリアが茜の救助を優先した所為で、今や舞は完全にフリーの状態だ。 アセリア達が密集している地帯に向かって、ニューナンブM60が何度も何度も放たれる。 アセリアは茜を抱きかかえて跳躍し、瑞穂もまた素早い動きで難を逃れる。 二人共が最大限に神経を張り巡らせていた為、第三者に狙われている事実を素早く察知し得たのだ。 この場で舞の銃撃を躱せなかった人間は、たった一人。 「……ぐぎゃああああああっ!!」 森の中に響き渡る、濁った叫び声。 只一人逃げ遅れた孝之は、左肩を完全に撃ち抜かれていた。 元よりズタボロだった孝之の左肩は、今の攻撃で完全に限界を迎えた。 骨は完全に砕け散り、肉も大方引き裂かれ、何時肩から先が千切れ落ちても可笑しくない状況。 今すぐに出血大量で死んだとしても、何の不思議も無い状態。 だが当然ながら、この場に彼を気遣ったりするような者は居ない。 油断してしまえば何時急襲を受けてしまうか分からないのだから、余分な事は考えられない。 誰一人として孝之の怪我を気にも留めず、次なる行動へと移ってゆく。 「逃がさないっ…………!」 茜を抱きかかえて後退するアセリアの下へ、投げナイフを握り締めた瑞穂が疾駆する。 幾らアセリアといえども、人一人抱きかかえた状態では、まともな反撃など出来る筈も無い。 アセリアは茜を地面に下ろし、続いて鉄パイプを構えようとする。 だがそれはあくまで、一般的な女性相手と想定した時の動き。 実際には男性であり武術の心得もある瑞穂は、アセリアの予測を大幅に上回る速度で、距離を詰め切った。 アセリアが鉄パイプを構えるよりも早く、瑞穂の投げナイフが横凪ぎに振るわれる。 アセリアは後ろに数歩下がってナイフの軌道から逃れたが、そこに追い縋る瑞穂。 瑞穂はナイフをポケットに戻し、それと同時に密着状態になるまで踏み込んだ。 「柳のように、風になびくんだ……っ!」 「――――!?」 互いの吐息を感じ取れる程の距離で、瑞穂はアセリアの右肘を掴み取る。 そのままアセリアの腕を井桁に組んで、捻って極めようとする。 幾らスピリットであろうとも、関節を完全に極められてしまえば、そのまま投げ飛ばされてしまうだろう。 だがアセリアは咄嗟の判断で鉄パイプを左腕に持ち替えて、それを瑞穂の腕目掛けて振り下ろした。 こうなっては瑞穂もこれ以上攻撃を続行する訳にはいかず、素直に腕を離して後退する。 「どうして……ミズホは戦う? 私やアカネを殺そうとする?」 再度質問を投げ掛けるアセリア。 彼女の声には僅かながら、悲痛な色が混じっていた。 「……簡単な事ですよ。鷹野三四は、この殺し合いで優勝すれば願いを叶えられると云いました。 それが嘘か本当か、僕には分かりません。ですが可能性が1%でもあるなら、僕は貴子さんを生き返らせる為に戦いますっ……!」 「ん……タカノが、そう言ったのか?」 「はい、そうですよ」 衝撃的としか言いようが無い事実を口にしながらも、瑞穂は投げナイフを構え直す。 それに応えるようにして、アセリアも鉄パイプを握る手に力を篭めた。 力量的には圧倒的に上回るアセリアだったが、今の彼女に瑞穂を殺す気は無い。 そして鉄パイプの長過ぎるリーチと大きな質量が、障害物だらけのこの森ではハンデとなる。 扱い辛い武器で手加減を強いられるアセリアと、心置きなく全力で戦う事が出来る瑞穂。 二人の戦いは、どうも長引きそうだった。 「こんな……こんなのって……」 かつて手を組んで戦ったにも関わらず、敵味方に分かれて対峙するアセリアと瑞穂。 茜はその光景を、嫌な夢でも見ているかのような気分で眺めていたが、その時視界の端に何かが映った。 それは銃を構えようとしている舞の姿。 誰にもマークされていなかった舞は銃弾の再装填を終えて、今にも瑞穂とアセリアに銃弾を浴びせようとしていたのだ。 それを目の当たりにした茜は、ようやく今自分が成すべき事に思い至り、手にしていた投げナイフを投擲した。 投げナイフが舞に躱されるのを待たずして、茜は全力で前方へ駆ける。 「たああっ!!」 「…………くぁッ!?」 茜はスライディングの要領で大きく跳躍して、舞の腰に組み付いた。 そのまま二人は縺れ合い、大きくバランスを失ってしまう。 茜の視界に、茶色い地面と木々の緑が交互に映し出されてゆく。 次の瞬間には茜も舞も、乾いた土の感触を頬で確かめる羽目となる――詰まる所、二人は転倒したのだ。 「くぅ――――このっ……!」 舞は未だ自分の腰を掴んで離そうとしない茜目掛けて、ニューナンブM60を放とうとする。 だがこの状態で銃を撃ってしまえば、自分自身にも被害が及ぶかも知れなかった。 銃を撃てば確実に茜は殺せるが、こんな所で無駄な怪我を負う訳にはいかない。 舞は即座に狙いを切り替え、左拳を茜の背中に思い切り振り下ろした。 不十分な態勢である為、一発では威力が足りなさ過ぎるし、その程度では茜とて抵抗を弱めたりしないだろう。 故に舞は何度も何度も、茜の力が弱まるまで同じ動作を繰り返す。 「あぐっ……」 十発程拳を打ち込んだ所でようやく、舞の腰を締め付ける力が弱まった。 その隙に素早く茜を振りほどき、舞は両の足でしっかりと起き上がった。 間髪置かずにニューナンブM60の銃口を、未だ倒れたままの茜に向ける。 「……これで終わり」 冷たい殺気を灯した舞の双眸が、倒れ伏す標的を射抜く。 茜も何とか立ち上がろうとはしているものの、背中を強打された所為で、その動きは酷く緩慢だ。 だがそこで、舞は背後から何かが忍び寄ってくるのを察知した。 直感に従ってサイドステップを踏むのとほぼ同時、それまで舞が居た空間は鋭利な斧によって切り裂かれていた。 「何度も何度も邪魔しやがって、このクソアマがあああ!」 斧の使い手は、狂人鳴海孝之。 白河ことりを強姦しようとした時も、アセリアと戦っている時も、同じ女に妨害された。 数度に渡る横槍を入れられた孝之は、舞に対して激しい怒りを抱いていた。 千切れかけている左腕程では無いにしろ、ボロボロな右腕を酷使して力任せに斧を振り回す。 その動きは決して俊敏とは言えず、とても舞を捉えきれる程のものでは無い。 だが鮮血を撒き散らしながら暴れ回る孝之の姿に、舞は驚きを隠せなかった。 前回の戦いと今回で、既に自分は五発も銃弾を撃ち込んでいるのだ。 にも関わらず戦い続ける孝之の耐久力は、尋常でないと言わざるを得なかった。 「身体を撃っても止まりそうに無い……なら!」 本体を倒すのが難しいのならば、まずは得物を弾き飛ばした方が利口だろう。 舞は狙いを孝之本体から斧へと切り替えて、ニューナンブM60の引き金を絞った。 銃口から吐き出された38スペシャル弾が、正確に孝之の斧へと突き刺さる。 飛び散る火花、空気を震わせる程の振動――常人なら間違いなく衝撃に耐え切れず、斧を手放してしまうだろう。 だがそんな常識、この狂人には通じない。 「ひゃっはあああっー!!」 「…………ッ!?」 孝之は斧を撃たれても、衝撃で右人差し指の骨に皹が入っても尚、その手を離さなかった。 一発、二発と斧が振り下ろされ、その度に舞は回避を強要される。 予想を外された動揺もあり、反撃する程の余裕が生み出せない。 このまま近距離で戦っても不利だと判断した舞は、身体を孝之に向けたまま後ろ足で後退する。 「この、待て……ぐうっ!?」 追い縋ろうとした孝之だったが、怪我している足の所為でバランスを崩し、傍にあった茂みの中に頭から倒れ込んでしまう。 それを確認した舞は孝之から視線を外し、茜の方へと首を向けた。 茜は背中のダメージがようやく抜けたのか、しっかりと立ち上がり、先程投げ捨てていたナイフも回収していた。 しかしその視線は舞にでは無く、別方向――即ち未だ一騎討ちを続けている瑞穂とアセリアに向けられている。 この状況ならば、舞が誰を狙うべきかなど決まり切っている。 難敵アセリアや、俊敏な動きを見せる瑞穂、ゾンビの如き孝之よりも、隙だらけの茜を狙うに決まっている。 今度こそ獲物を仕留めるべく、ニューナンブM60を握り締めた舞の腕がゆっくりと上がってゆく。 しかしそれをアセリアが見過ごす筈も無い。 アセリアは即座に瑞穂との戦いを放棄して、またも茜を救うべく疾走する。 その事に気付いた舞は標的を切り替え、アセリアに照準を合わせようとするがなかなか上手く行かない。 舞の視点からすれば、不規則にステップを踏みながら迫り来るアセリアは、分身しているようにすら見える。 距離がある状態で銃弾を撃っても、この敵に当たらない事など明白だ。 引き付けて引き付けて、それこそアセリアの鉄パイプが届きかねないくらいの間合いで、舞は初めて引き金を絞った。 「っ――――」 至近距離で牙を剥く銃弾。 アセリアは回避に全力を注ぎ込んだものの、完全に躱し切るには至らず、頬を僅かながら裂かれてしまった。 火薬の匂いが鼻腔を刺激し、痺れるような痛みが脳髄に伝えられる。 しかし無論その程度では、致命傷になるどころか戦力が低下する事すら無い。 間合いを詰めきったアセリアは、再び舞との戦いを開始した。 そしてアセリアが舞と戦い始めたという事は、瑞穂をマークする人間がいなくなったという事。 優勝を目標としている瑞穂からすれば、出来る限りこの場の人間は殲滅しておきたい。 この場で最も脅威となるのは、唯一徒党を組んでいる茜とアセリアに他ならない。 そして尋常でない戦闘力を誇るアセリアよりも、只の女子高生である茜の方が遥かに倒しやすいだろう。 故に瑞穂は目標を茜に定め、一歩一歩足を進めてゆく。 「…………瑞穂さん」 茜も瑞穂の接近には気付いており、投げナイフを右手で握り締める。 狼狽する暇も、目の前の現実を――瑞穂が殺し合いに乗ったという事実を否定する猶予も無い。 此処で応戦しなければ、呆気無く殺されてしまうだけだろう。 「茜さん……貴女を殺します」 それが、開始の合図。 弾けるように瑞穂が動き、それと同時に茜もまた武器を振るった。 同じ投げナイフ――元は厳島貴子に支給された物――が衝突し、激しい火花を散らす。 同じ武器を用いているのだから、得物の差による優劣は存在しない。 だが得物が同じであろうとも、瑞穂と茜では腕力に大きな違いがある。 「――あつっ…………!」 茜は敵の一撃を何とか受け止めたものの、被害無しという訳にはいかない。 得物越しにも激しい衝撃が伝わり、右腕に痺れるような痛みが奔った。 茜の回復を待たずして、瑞穂の第二撃が横凪ぎに放たれる。 「このっ――――」 茜は即座に後方へ退避し、猛り狂う死の旋風から逃れようとする。 だが完全には躱し切れず、腹部を軽く切られてしまう。 内臓には届かず、致命傷にも至らぬであろう傷――しかし、決して軽傷では無い。 紅い鮮血が傷口より漏れ出て、茜の制服にじわりじわりと染み込んでゆく。 そして茜が痛みに顔を顰めたその瞬間、叩き込まれる中段蹴り。 「フッ――――!」 「う……ああっ……!」 傷口の上から腹部を強打され、茜はたたらを踏んで後退してゆく。 態勢を立て直す暇など与えぬと言わんばかりに、瑞穂が前方より迫る。 瑞穂の表情には、何の躊躇の色も在りはしない。 このまま追い付かれてしまえばとても防ぎ切れぬと判断し、茜は左手をポケットの中に突っ込んだ。 右手に握り締めている物とは別の――二本目の投げナイフを取り出し、瑞穂の胸目掛けて投擲する。 突っ込んでくる敵に対して、カウンター気味に放たれたナイフ。 面積の大きい胴体部を狙ったそれは、茜にとって正しく会心の一撃と呼ぶに相応しいものだ。 だが―― 「――――遅い!」 「そんなっ…………!?」 それもあっさりと、防がれてしまった。 ナイフ同士がぶつかり合い、高い金属音が響き渡る。 茜の投げたナイフは、瑞穂の身体を捉える事無く地面に吸い込まれていった。 躱し切れぬと判断した瑞穂は足を止めて、迫る攻撃をナイフで叩き落したのだ。 貴重な武器を放棄してまで放った攻撃ですら、傷一つ負わせられない。 どうにか距離を開く事には成功したが、それだけだった。 満身創痍の様相を呈してきた茜とは対照的に、瑞穂は未だ息一つ乱していない。 幼い頃より鏑木の家で鍛えられてきた瑞穂には、常人とは一線を画すだけの力がある。 その実力たるや、修練を積んだ男が四人掛かりで襲い掛かっても勝てぬ程だ。 瑞穂と茜の戦力差は明らかだった。 茜は肩で息を整えながら、苦しげな表情で言葉を発する。 「ハ――フ――――ハア、――――――ハア……。瑞穂さん……貴女は貴子さんを生き返らせる為に、殺し合いに乗ったのね? この殺し合いを仕切っている連中に、優勝すれば願いを叶えてやるって言われたのね?」 問い掛けられた瑞穂は、涼しい顔をしたままコクリと縦に頷いた。 かつての仲間と戦っているというのに――眉一つ動かさず、機械的に。 一切の感情を見せぬ瑞穂の表情は、茜にとって酷く悲痛なものだった。 「瑞穂さんはそれで良いの……? 主催者の言いなりになって、全てを棄てて、本当にそれで満足なのっ!?」 「……………っ」 叩き付けられる言葉。 その言葉には怒りよりも寧ろ、悲しみの色が強く入り混じっていた。 裏切った仲間を罵るというより寧ろ、気遣うような想いが篭められていた。 瑞穂は一瞬表情に翳りを見せたが、すぐに元の無表情を装う。 自分の目的は一つ、それを成し遂げる為には迷ってなどいられない。 「……ええ、構いません。僕にとっては貴子さんが全てですから。貴子さんの為なら僕は、鬼にも悪魔にもなってみせる!」 一際大きい声で叫ぶや否や、瑞穂はかつてない気迫で駆け出した。 あっという間に茜の眼前まで詰め寄り、投げナイフを乱暴に振り落す。 茜はその一撃を受け止めたものの、得物越しに伝わる衝撃は先程の倍以上だった。 「僕は貴子さんを守ると決めた!」 「――――くああっ……」 瑞穂は自分自身に言い聞かせるように叫びながら、容赦の無い攻撃を繰り出していく。 肩を突き出す形で放った瑞穂の当身が、茜の胸部辺りに打ち込まれる。 胸を強打された茜は一瞬呼吸が出来なくなってしまい、動きが大幅に鈍る。 続いて繰り出される、斜め下方から振り上げる軌道での一閃。 死に物狂いで躱そうとした茜だったが、到底間に合わない。 「だから貴子さんの為に、彼女を生き返らせる為に、僕は戦わなければいけないっ!」 「……あぐううっっ!!」 茜は左肩を大きく斬り裂かれ、激痛に悲鳴を洩らす。 そんな茜の腕を、引き寄せるように瑞穂が掴み取る。 ナイフを捨て、両手でしっかりと茜の腕を固定して、渾身の一撃を放つ。 「――僕は貴子さんの為に、人を殺さなければいけないんだあっ!!!」 「う……あああああぁぁっ!!!」 瑞穂の全身のバネを総動員して放たれた技は、所謂背負い投げと呼ばれるものだった。 視界が大きく一周した後、茜の背中に強大な衝撃が襲い掛かる。 それは下手をすれば、後遺症が残りかねない程の一撃。 瑞穂は先程手放したナイフを回収し、仰向けに倒れ込む茜を複雑な表情で見下ろした。 「――――アカネ!」 茜の窮地に反応したアセリアが、またも対峙する舞を放置して駆け出そうとする。 だがそう何度も何度も、上手く舞を振り切れる筈はない。 同じ行動を繰り返せば、いずれ敵に読まれてしまうのは自明の理。 「……行かせない」 「…………ッ!!」 アセリアの行動を予見していた舞は、素早くその進路上に回り込んだ。 舞にとってもこの場で最大の脅威は、徒党を組んでいるアセリアと茜のペアだ。 ならばみすみす見逃してやる道理など、何処にも在りはしない。 茜と瑞穂の勝敗は最早確定した。 後は瑞穂が倒れている茜に向けてナイフを振り下ろせば、それで終わりだろう。 茜がトドメを刺される時まで、このまま此処でアセリアを足止めしておくべきだ。 だがその直後、舞はアセリアが驚愕の表情を浮かべているのに気付いた。 その視線の先を確認すべく、後ろへ振り向くと――――未だ勝負は付いていなかった。 茜はよろよろと、しかし確かに自分の力で起き上がって、取り落としたナイフも拾い上げていた。 「――――茜、さん」 瑞穂は驚きを隠し切れない様子で、呆然と茜を眺めていた。 有り得ない。 起き上がれる筈がない。 さっきの背負い投げは、これ以上無いくらい完璧に決まった。 背骨に皹が入っても、神経が何本か千切れても、まるで不思議でない一撃。 仮に自分が逆の立場で同じ技を受けたなら、間違いなく起き上がれないだろう。 それに左肩の斬り傷も、かなり深く刻み込まれている筈だ。 なのにどうして、茜は立ち上がれたのだ? どうして未だ戦意の衰えぬ瞳で、こちらを見つめているのだ――? 「――貴子さんの……為?」 ぼそりと、茜の口から言葉が漏れ出た。 茜はガクガクと揺れる膝を叱り付け、瑞穂の方へと向き直る。 喉元まで混み上げてきた血塊を飲み下し、左肩と背中の痛みは強引に噛み殺した。 所詮自分は非力な女だ。 この場に居る誰よりも弱いし、当然瑞穂にも敵わないだろう。 それでも、まだ負けられない。 孝之は完全に狂ってしまったが、瑞穂は正気を失ってはいない。 孝之はもう救いようが無いが、瑞穂はまだ引き返せる筈だ。 ならば自分が倒されるのは、伝えるべき事を全て伝えてからだ。 瑞穂を止めてからだ。 姉も救えず、好きだった人も救えず、仲間すらも救えないまま終わるなど、絶対に認めない――! 「貴子さんの為――そんなの嘘よ!」 茜は残る全ての力を振り絞って、瑞穂に斬り掛かった。 満身創痍の身体から繰り出される斬撃は、特筆すべき点など無い。 速さの面でも、威力の面でも、技術の面でも、まるで取るに足らないものだ。 だがその斬撃を受け止めた瑞穂は、何故か胸がズキズキと痛むのを感じた。 「嘘……ですって?」 茜の動きは隙だらけだ。 反撃しようと思えば、何時でも仕留める事が出来るだろう。 しかし瑞穂はもう少しだけ、防御に徹しようと思った。 茜が何を伝えようとしているか、聞き届けなければいけない気がしたのだ。 アセリアと舞も何か特別な物を感じたようで、瑞穂と茜の戦いに魅入っている。 「皆の命と引き換えに生き返らせて貰って、貴子さんが喜ぶとでも思ってるの? 瑞穂さんが逆の立場なら、貴子さんにそんな事をして貰って喜べるの!?」 「――――――――っ」 一発、二発。 脇腹と右肩に向けて放たれた連撃を、瑞穂はあっさりと弾き返す。 だが告げられた言葉に対してはそうもいかなかった。 何の言葉も返せない。 自分が逆の立場なら、喜べる筈が無い。 「結局貴子さんの為だとか愛だとかって、自己満足でしかないよね? ただの偽善よ……そんな事をしても皆不幸になるだけ! 瑞穂さんも貴子さんも、罪悪感に押し潰されちゃうだけよ!!」 「っ……そうかも、知れませんね……」 今度は、左肩、右足、左腕、計三箇所に向けて攻撃が放たれた。 先程より幾分か早くなっているが、まだ見切れるレベル。 しかし攻撃を防ぎながら瑞穂は思う――茜の言う通りだと。 砂時計の砂は決して逆流しないように、犯した大罪が消える事も無い。 愛する者を生き返らせる為だけに、多くの人々を殺し続ける。 自分自身の為だけに、数え切れない程多くの大切なものを奪い続ける。 そんな事をした所で、罪悪感に苛まれ地獄の責め苦を味わう羽目になるだけだ。 それでも―― 「それでも……それでも僕は、貴子さんを守ると誓ったから! 一生を賭けて愛すると誓ったから!」 瑞穂の身体が前傾姿勢となり、その右肩がピクリと揺れる。 「僕は貴子さんを生き返らせる! たとえそれが……僕の自己満足だったとしてもッ!!」 今度は瑞穂がナイフを奔らせた。 自身の決意を籠めた、正真正銘全力での薙ぎ払い。 最小限の動作で放たれた斬撃は、正確に茜の喉元に向かって突き進む。 五体満足の状態でも、茜の実力ではまず防げぬであろう鋭い一閃。 「くっ…………!!」 しかし茜は、それを受け止めた。 決して防げぬ筈の一撃を、己の得物で確かに受け止めた。 瑞穂のナイフを押さえたまま、告げる。 「自己満足の為に皆を傷付けて、自分自身も傷付けて……。そんなの……そんなのアルルゥちゃんが……余りに可哀想!!」 「…………アルルゥちゃん……が……?」 瑞穂の瞳が大きく揺らぐ。 ナイフを握り締める手の力が、瞬く間に緩んでいく。 茜は何時の間にか、瞳一杯に涙を溜め込んでいた。 「酷いよ……瑞穂さんは酷いよ…………アルルゥちゃんは瑞穂さんを庇って死んじゃったのに! それでも瑞穂さんに笑っていて欲しいって、そう言ってたのに!」 もう、堪え切れない。 瞳から大粒の涙を零しながら、茜は絶叫する。 「瑞穂さんがそんな事じゃ……アルルゥちゃんは……何の為に死んだのよおおおおっ!!」 それはきっと、様々な想いが入り混じった叫び。 言葉では表し切れぬ程、多くの想いが篭められた絶叫。 ポロリ、と瑞穂の手からナイフが落ちた。 「アルルゥ……ちゃん……茜さん……貴子さん……僕は…………僕はっ……! うあ……あああああああっ……」 一筋の涙が瑞穂の頬を伝い落ちてゆく。 瑞穂はよろよろと二、三歩後退し、そのまま膝から地面に崩れ落ちた。 自分はこれまで、何をしていたのだろうか。 人を殺して、貴子を生き返らせるなんて、そんなの誰も――アルルゥも、貴子自身も望んでいなかった筈だ。 アルルゥは身を挺して、自分を助けてくれたのに。 自分の力量が足りなかった所為で、アルルゥは死んでしまったのに。 それも恨み言一つ遺さず、皆の幸せだけを願ってくれていたのに……! 瑞穂の心に、途方も無い後悔と自責の念が押し寄せてくる。 アセリアも、茜も、舞すらも、泣き崩れる瑞穂をただ眺めている。 それでも、場の状況は刻々と動き続けていた。 アセリアがその事に気付いた時には、もう手遅れだった。 何かが、空を切る音。 「――――アカネ、避ける!!」 「え…………」 アセリアの声に反応して、瑞穂が顔を上げたその時。 グシャリと、近くで何かが潰れるような音がした。 瑞穂が音のした方へ視線を向けると、そこでは―― 「茜……さん?」 目に映る、赤、朱、紅。 茜の背中に、鋭利な斧が突き刺さっていた。 血の霧が大きく空中に広がり、周辺の木々まで赤く染め上げてゆく。 茜は口から盛大に吐血した後、こま落としのようにガクンと仰向けに倒れ込んだ。 茜が倒れ込んだ周囲の草々も、瞬く間に真っ赤になってゆく。 呆然としたまま、その光景を眺め見る一同。 そこに気を違えたような――否、正しく狂っているとしか表現しようが無い、醜悪な笑い声が響き渡る。 「ハハハハ……ヒャハハハハハハハハッ!!」 近くの木陰から、一人の狂人がゆっくりと姿を現す。 哄笑を上げながら現われた人物は、鳴海孝之その人だった。 「やった……遂にやったぞ! 茜ちゃんを起こしてやったぞォォォォォッ!!」 本当に嬉しそうに、口元を綻ばせる孝之。 何故孝之が、アセリアにすら察知される事無く、茜を仕留められたのか。 孝之は戦いの途中で一旦身を隠し、反撃の機会を伺っていた。 そして舞とアセリアの動きが止まり、瑞穂と茜の戦いも終わった瞬間こそが決定的な好機だった。 最早その時には、全員が孝之の存在など忘れ去っていたのだ。 攻撃する際直接斬り掛かるのではなく、斧を投擲したのも大きい。 いかなアセリアと言えど、予測し得ぬ人物による突然の投擲攻撃からは、茜を守り切れなかったのだ。 そこで、一同の鼓膜を震わせるか細い声。 「……瑞穂、さん、何処……?」 全員の視線が声のした方へと集中する。 注意していないと聞き逃してしまいそうなくらい小さな声で、茜が呟いていた。 最早どうにもならない致命傷だったが、それでも茜はまだ生きていたのだ。 すぐさま瑞穂が大地を駆けて、茜の下へと急行する。 「アカネッ……」 そんな中、アセリアは苦々しげに奥歯を噛み締めていた。 今、自分は『悲しい』という感情を感じている――茜に駆け寄りたかった。 今、自分は『憎い』という感情を感じている――孝之を殺したかった。 だがすぐ傍に居る川澄舞は、銃器で武装した強力無比な敵。 今は大人しくしているが、何時銃撃を再開しても可笑しくは無い。 ならば此処で舞のマークを外す訳にはいかなかった。 「――――茜さん!」 瑞穂は右腕を茜の腰に回して、その身体を抱き起こした。 茜の制服にたっぷり染み込んだ血が、瑞穂の腕を濡らしてゆく。 「瑞穂さん……そこに居る、の……?」 「居るよ! 僕は此処に居るよっ!!」 「…………? あは、あはは…………ゴメン、もう、良く聞こえないや……」 語る茜の視線は虚空を彷徨っている――聴力だけでなく、視力までも失っているのだ。 だから瑞穂は茜の手を握り締めた。 自分の存在を伝えるように、心を伝えるように、懸命に握り締めた。 茜の手はとても小さく、頼りなさげなものだった。 だが確かに茜はこの手で、自分を深い闇の底から救ってくれた。 目を逸らしていた現実と、忘れかけていたアルルゥの願いを思い出させてくれたのだ。 瑞穂の腕の中で、茜が静かに言葉を紡ぐ。 「瑞穂さん……どうして……だろうね…………? 私、は…………ただ、お姉ちゃんと鳴海さんの傍に居たかっただけなのに……。 私の想いが叶わなくても、お姉ちゃんと鳴海さんが笑っていてくれれば、それだけで良かったのに……」 幸せそうな孝之と遥の姿さえ見ていられれば、茜はそれで良かった。 一度は交通事故により砕かれてしまった、儚い夢。 事故にあった遥は眠ったまま目を醒まさなくなり、孤独に耐えられなくなった孝之は別の女の下へと走ってしまった。 でも三年の月日を経て、遥の意識が戻った。 孝之も遥の下に戻って来てくれた。 やり直せる筈だった。 再び皆、幸せになれる筈だったのに――そこで突然、このような殺人遊戯に放り込まれたのだ。 「お姉ちゃんは死んじゃって……鳴海さんは、狂っちゃって……。どうしてこんな事に……なっちゃったん、だろうね……」 瑞穂はその問いに対する答えを、持ち合わせてはいなかった。 自分達が何故連れて来られたかなど、分かる筈も無い。 瑞穂に分かるのは一つだけ。 茜やアルルゥはこんな所で殺される謂れなど無い、心優しい少女だという事だ。 「鳴海さんも……お姉ちゃんも……瑞穂さんも……貴子さんも……アセリアさんも……アルルゥちゃんも……皆が悲しまなくて良い世界があったら……。 皆で一緒に笑い合える世界があったら、良いのに、ね……」 その言葉を最後に、茜は口を閉ざした。 戦いでは余り役に立てなくて、遥も孝之も助けられなくて、それでも精一杯生き続けた末、その生涯を終えた。 茜の両頬には、細い涙の筋が浮かび上がっている。 瑞穂は茜の涙をふき取り、瞼を閉じさせてやってから、ゆっくりとその身体を抱き締めた。 瑞穂の瞳からは、止め処も無い涙が溢れ出ていた。 そんな瑞穂の頭上から、この場に居る全員の記憶にある声が響いてくる。 『――瑞穂さん、これで分かったでしょう?』 嘲笑うような声は、鷹野三四の物。 正確には、鷹野三四の声を真似た土永さんの物だった。 『殺し合いを否定しても、その子のように殺されてしまうだけよ。 先手必勝――生き延びたければ、欲しい物を手に入れたければ、殺し合いに乗るしかないのよ』 「…………」 土永さんは木の上に身を隠しながら、瑞穂を扇動しようとする。 本来ならこんな大人数に近付きたくは無いが、今回は仕方ない。 折角手に入れた瑞穂という操り人形をこのまま逃すのは、余りにも惜し過ぎる。 『だから殺し合いなさい! 憎しみ合いなさい! そうすれば…………!?』 土永さんが話し終わるのを待たずして、一つの大きな銃声が木霊した。 驚愕に土永さんの目が大きく見開かれる。 銃声の主は川澄舞。 鷹野の――即ち土永さんに踊らされている筈の舞が、突如天空に向けて銃を放ったのだ。 「……五月蝿い。少し黙ってて」 舞はそう呟きながら、鷹野の声がした方向を睨み付けた。 自分でも莫迦な行動をしたとは思う。 殺し合いに乗った人間が多ければ多い程、自分の負担は軽減する。 あのまま扇動を行わせた方が――成功するとは、とても思えないが――得策だった筈だ。 だけど、我慢出来なかったのだ。 茜という少女は非力ながらも必死に戦い続け、誇り高き死を遂げた。 その死を穢す様な真似は、どうしても見過ごせなかった。 『ぐっ……きさっ、いえ、貴女……私に歯向かう気? 佐祐理さんがどうなっても良いの?』 「……逆らう気はない、ちゃんと人は殺す。だけど――」 詐術で舞を屈服させようとする土永さんだったが、脅し方が致命的なまでに拙かった。 舞の瞳に明らかな怒気が宿る。 周囲の気温が数度下がったかと思わせる程の、凄まじい殺気が放たれる。 「許さないから! 佐祐理を傷付けたら……絶対に許さないから……っ!!」 『……………ッ!!』 土永さんは悲鳴が漏れそうになるのを、必死の思いで耐え凌いだ。 駄目だ――こんな所に留まっていたら、命が幾つあっても足りない。 あの少女は銃を持っているのだから、何時銃撃してくるか分からない。 操り人形を失うのは惜しいが、此処は保身を最優先すべきだ。 そう判断した土永さんは、羽音を立てぬよう、ゆっくりとその場を後にした。 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(前編) 投下順に読む 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(前編) 時系列順に読む 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(前編) 涼宮茜 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(前編) アセリア 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(前編) 宮小路瑞穂 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(前編) 川澄舞 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(前編) 土永さん 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(前編) 鳴海孝之 131 再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編)
https://w.atwiki.jp/smox/
DSサモンナイトX ~Tears Crown~の攻略wikiです 誰でも編集OKです DSサモンナイトX ~Tears Crown~公式サイト サモンナイトX ~Tears Crown~をamazonで予約する 発売前情報 ファミ通
https://w.atwiki.jp/utauuuta/pages/1992.html
【登録タグ A airbabe ソーホー 曲 欲音ルコ 雪歌ユフ】 作詞:airbabe 作曲:airbabe 編曲:airbabe 唄:欲音ルコ・雪歌ユフ・ソーホー 曲紹介 ...あのね... 歌詞 (動画歌詞より転載) 溢れるこの思いを ぼくは誰に伝えればいいの 溢れるその気持ちを きみは誰と分ち合えるの 言葉にした途端に 何故だかとても安っぽくなる 伝えたい事なんて ひとつふたつしか無いって言うのに 寂しいとか悲しいとかそんなんじゃない 辛いとか怖いとかそんなんでもない...あのね... いろんな想いがぐるぐると広く束になって ぼくは今何故か涙を流してる 胸刺すこの痛みを きみは如何して紛らわせてるの 零れるその涙を ぼくは如何して止めたらいいの 歌声にした途端に 何故だかとても恥ずかしくなる 話したい事なんて ほんとにたいした事じゃないのに すきとか嫌いとかそんなんじゃない 愛しいとか切ないとかそんなんでもない...あのね... 解らない想いがゆらゆらと遠く空に舞って きみは今きっと涙を拭いている コメント 名前 コメント